二人の希望は、和室を取り払って、リビングを広くしてほしいというものだった。「会社から満員電車に乗って帰ってくるでしょう。駅前のスーパーで足りない食料品を買って、疲れた体で家にたどり着く。ドアを開けると一日中閉め切っているものですから、空気がよどんで。夏なんかだといろんな匂いが混じってかび臭さを感じるのです、たった一日のことなのに。窓を開けて風を通して、急いでエアコンをつけるのですけど。入ってすぐ台所ですから、なんだか夕食の用意をせかされているみたいで、一休みする気にもなれない。このダイニングテーブルも、ちょっと物を置いたりするのにも便利だろうって買ったのですけど二人だと大きすぎますね。なんだかお客を沢山入れようと欲張ってテーブルを詰め込んだ食堂みたい。リビングを広くすれば、狭苦しい感じがなくなると思うのですけど」。というのである。狭苦しいというが、2LDKの住まいは夫婦二人住まいなら、むしろ恵まれた住環境といえるだろう。だのになぜ息苦しさを覚え、不満に感じるのか。そこには近代的で、快適なオフィス環境との対比があり、ギャップがある。近代的なオフィスはいうまでもなく生産効率を高めるために、社員の能力を最大限発揮させるように考えてつくられ、レイアウトされている。ただ広ければよいというわけではなく、仕事の内容によっては狭い部屋に大勢がいることで生産性を高めることもある。同じように、同居人数や家族構成、ライフスタイルによって、家の使われ方はたとえ同じ広さであっても違ってくる。2LDKという住まいがこの夫婦のようなライフスタイルを想定し、快適な住環境の実現を目指したものでないことはいうまでもない。