バスが博多の街に着いたのは朝の七時だった。すでに街は動きはじめている。博多駅近くの舗道にぽつんと降ろされ、僕は腰に手をあてて伸びをする。座席の形に曲がってしまったような体を伸ばすと、ぎしぎしと音をたてるような気さえする。「少しは眠れた?」隣で所在なげに立つH君に声をかけてみた。「いえ、まったく」とげんなりとした顔で答えた。「しかしすごい格好で寝ますよね。まるで体育座りっていうか、胎児のような体勢っていうか。
[人気サイト]
大江戸温泉物語 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad319550/
コンフォートホテル秋田 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad378176/
ドーミー倶楽部軽井沢 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad383344/
あの体勢で寝息をたててるんですから」おおきなお世話だった。僕にしても、そんな体勢で寝たいわけではない。狭い座席ではどうしても腰が痛くなるから……と編み出した苦肉の睡眠術なのだ。それを体育座り?胎児?それでは僕はバスから生まれた子どもではないか。しかし考えてみればその通りなのだ。車内でそんな体勢で寝る人はひとりもいなかったのだろう。H君の言葉にむきになる自分がなんだか切なくも映る。五十一歳にもなって、狭いバスのなかで少しはうまく眠ることができるといってなんぼのものでもない。気をとり直して港に向かうしかない。急がないと釜山行きの船に間に合わなくなってしまう。