体を縛り付けるコルセットや硬い布地

2011.05.26

体を縛り付けるコルセットや硬い布地、ハイヒールは、それを身に付けるのがどんな人物かを如実に物語る。明らかに、彼(彼女)は労働というものをしていなかった。その必要がなかったのである。さらに、一九世紀も終わりに近づいた頃には、プレタポルテ(既製服)がオートクチュール(誂えの服)に取って代わり、階級間に存在した数多くの垣根がとり払われつつあった。ファッションの民主化とも呼ばれる現象である。今日では境目が曖時になっているものの、服はまだある程度まで集団の差別化に利用されている。裕福か貧しいか、リベラルかコンサバか、流行に敏感かそうでないか、などだ。服で見栄を張る人間もいまだに存在する。ただし、必ずしもこれまでのようにあからさまではないけれども。プラグやヘルムートーラングのようなすっきりしたミニマル系の服の中にも、今や高嶺の花になっているものがある。垂誕の的のオートクチュールを買えるのは世界で二〇〇〇人(一〇〇〇人と言う人もいる)にも満たず、そのうち常連はわずか二〇〇人。デザイナーのオリジナルを手に入れられるのはまだ富裕層に限られているわけだが、現在では、そうしたデザインを雛形とした一般大衆向けのイミテーションが多数存在するため、上下の階級スタイルの溝もかなり埋まってきている。五〇〇ドルのオリジナルと三〇ドルのイミテーションが同時に店頭に並べば、両者の違いなどないも同然なのだ。こうしてファッションが庶民にも親しみやすい存在になったことで、トレンド支配の時代−どんなにバカげた流行でも輝くチャンスがある時代への道が開かれた。