存在感が薄い夫婦関係を象徴

2011.06.09

アメリカの経済学者フレデリカーピックフォードーサントスは、男性にとって結婚は、ゆりかごにいるときから妻をめとり、身のまわりのこと、家事、育児をしてくれる妻という存在があることを前提としてきた、と述べている。彼が家政婦をやとうと週の限られた時間しか役立たない不便さのコストを払わねばならないが、それが結婚することで解消する。妻をめとると生活費をわたすだけで、家事、育児に対する報酬を一切払わなくてすんでいる。また病人や老人介護も嫁のつとめとされ、無償でまかなわれ、社会は莫大なコストを節約できる」(大橋照枝『未婚の社会学』)男性の終身雇用制は、男性が自分のアイデンティティーを会社と同一化することによって会社が成長することを前提としてきた。これが日本経済を成長させてきたのである。終身結婚制も、同様に、女性のアイデンテゴアイーを夫と家に同一化させ、そこから離れることは罪悪というみえない鎖で縛ることにより、社会にかかるコストを節約してきた。終身雇用制と終身結婚制はこのように相似している。七三年にオイルショックがおき、七四年からマイナス成長となり、終身雇用がゆらぎはじめると共に離婚率は上昇しはしめた。しかし八六〜九二年のバブル期、経済的にゆとりができると、一次的に離婚は減少している。自分たちの結婚のかかえる問題点を、バブルの豊かさでショッピングや旅行、とまぎらわして離婚をまぬがれた人が多かったといえる。くしくも八六年の流行語大賞の新語部門表現賞には「家庭内離婚」がある。そして流行語部門の銅賞は、「亭主元気で留守がいい」。CMの一番人気のこのせりふは、存在感が薄い夫婦関係を象徴している。しかし、こうした希薄さをバブルに浮かれてみないことにして過してきたつけが、一挙にバブル崩壊後の離婚の増加につながっているように思える。

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